
《七月十四日》死ぬあたし氷川きよしがきこえてる
本を「道具」として使ったことはありますか?
昼寝のまくらにするとか、そういう話ではなくて。もっと、なんというか、いわゆる――人生の道具として。
わたしは、ある。十九歳のとき。失恋を、書物で乗り越えた。福永武彦の『愛の試み』。初めて読んだときは、あまりのリリシズムに、思わず心がしーんと冷静になってしまった本である。
けれど、命の危機に瀕したとき、しがみついて再読し、その真価がわかった。
名だたる先人たちに激推しされてきた本だけのことは、あった。
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