
《七月十六日》虹立つや見るものすべて逆しまに
ヴェネツィアが島だったなんて、行くまで知らなかった。ほんとうに。
着いたとき、「あ、島だ」って、思わず言ってしまった。
水の都って言うから、てっきり運河がたくさんある古い町ぐらいに思ってたのに。全然違った。海に浮かんでるし、空港から町まではバスじゃなくて船だし。水面を走るエンジン音は思ったよりうるさくて、遠くでは漁船みたいなのが揺れていた。
ああ、ここって、行くにも帰るにも波をこえていく町なんだなと。
暮らしていても、毎日ちょっと旅立ち、みたいな。
そういう感じが、なんか、よかった。
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