《七月十五日》夏座敷ガーゼのやうな陽が滲む

ここ一年くらい、大きめの額縁を探しているのだけれど、なかなか見つからない。正確には「これいいな」と思うものはある。でも、高い。だから、けっきょく見るだけ。見るだけの一年だった。
理想は、黒い木の縁に、細い金属が一筋だけ挟まっているような額。少しくすんだ金属の光。控えめで、でも確実に目を引く。ラルフ・ローレンのインテリアにありそうな、あの雰囲気のもの。

著者略歴

小津夜景(おづ・やけい)

1973北海道生まれ。句集に『フワラーズ・カンフー』(第8回田中裕明賞)、『花と夜盗』。エッセイ集に『カモメの日の読書』『いつかたこぶねになる日』『ロゴスと巻貝』。そのほか、ヴィオラ・ダ・ガンバ奏者須藤岳史との往復書簡『なしのたわむれ 古典と古楽をめぐる手紙』。現在『すばる』で「空耳放浪記」連載中。

(ヘッダー写真:小津夜景)

 

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