《八月三日》夕立や水の輪切って踏むペダル

朝、靴下を選ぶとき、さいきんは左右でちがう柄を合わせるようにしている。ちぐはぐの美というか、ちょっとした探究心というか。たぶん靴もそうするとおしゃれなんだけど、それには絶妙なバランスを保った靴を何足もそろえる必要があって、つまり金がかかる。おしゃれに金がかかるのは、まあ当然といえば当然だけど、そんな当然ばかりでは生きにくい。

著者略歴

小津夜景(おづ・やけい)

1973北海道生まれ。句集に『フワラーズ・カンフー』(第8回田中裕明賞)、『花と夜盗』。エッセイ集に『カモメの日の読書』『いつかたこぶねになる日』『ロゴスと巻貝』。そのほか、ヴィオラ・ダ・ガンバ奏者須藤岳史との往復書簡『なしのたわむれ 古典と古楽をめぐる手紙』。現在『すばる』で「空耳放浪記」連載中。

(ヘッダー写真:小津夜景)

 

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バックナンバー

  • 8月5日:風死せりわたし透明すぎるのか
  • 8月4日:海月浮くいにしへびとの袖のごと
  • 8月3日:夕立や水の輪切って踏むペダル
  • 8月2日:夕立やサドルにひとつ空の花
  • 8月1日:片蔭の客は気まぐれ書生ども

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