《十一月十八日》曼珠沙華やはらかに首回しけり

昨日のレコード屋で、ニーナ・ハーゲンの「ニューヨーク・ニューヨーク」を見つけた。1ユーロの投げ売り箱にあった。迷わずつかんで帰る。針を落とした瞬間、思わず笑った。これ、ほとんどAdoじゃん。リズムは機械、声は獣。怒り、甘え、嘲り祈り――過剰なテンションが自分を食い破っていく。つまり、生き方がオペラ。

著者略歴

小津夜景(おづ・やけい)

1973北海道生まれ。句集に『フワラーズ・カンフー』(第8回田中裕明賞)、『花と夜盗』。エッセイ集に『カモメの日の読書』『いつかたこぶねになる日』『ロゴスと巻貝』。そのほか、ヴィオラ・ダ・ガンバ奏者須藤岳史との往復書簡『なしのたわむれ 古典と古楽をめぐる手紙』。現在『すばる』で「空耳放浪記」連載中。

(ヘッダー写真:小津夜景)

 

無断転載・複製禁止

バックナンバー

  • 11月18日:曼珠沙華やはらかに首回しけり
  • 11月17日:南瓜切るときの静けさそれでよし
  • 11月16日:秋薔薇やめきめきと鳴る母の胎
  • 11月15日:山粧ふ影燃え立ちて火の鳥に
  • 11月14日:木天蓼を磨く月下の神父かな
  • 11月13日:毒茸や太郎うっとり毒の恋
  • 11月12日:鷹渡る仮面の村の眼を射抜く
  • 11月11日:鵙啼いて銅の太陽落ちにけり
  • 11月10日:地虫鳴く色の祈りを掘り起こす
  • 11月9日:秋鰹叫ぶかたちのまま死せり
  • 11月8日:流れ星ななつの棘を落としてく
  • 11月7日:木賊刈るメトロノームの狂ひかな
  • 11月6日:金の罅もつゐのししが泣いてゐる
  • 11月5日:夜の鞍星のにおいがまだ残る
  • 11月4日:鳥兜むらさきの雨ねぢれ降る
  • 11月3日:山葡萄くすりともせず熟れにけり
  • 11月2日:鰡の群れ太鼓の胴を泳ぎゆく
  • 11月1日:秋の象うすうくうすうく風を舐め

俳句結社紹介

Twitter