《十二月九日》短日やバターたっぷりのごほうび

このあいだ山の上に滝を見にいったのだが、まあ滝というからには、びしゃーっと下に落ちていくものだろうと思っていた。ところが行ってみると、水は落ちるどころか、やけにいきおいよく横へ飛んでいる。岩肌を伝うのがどうしても我慢ならん、という風情である。そんな滝があっていいのかと少し面食らったが、見ているうちに、こういうへそ曲がりの滝も悪くないな、と腕組みしつつうなずいた。

著者略歴

小津夜景(おづ・やけい)

1973北海道生まれ。句集に『フワラーズ・カンフー』(第8回田中裕明賞)、『花と夜盗』。エッセイ集に『カモメの日の読書』『いつかたこぶねになる日』『ロゴスと巻貝』。そのほか、ヴィオラ・ダ・ガンバ奏者須藤岳史との往復書簡『なしのたわむれ 古典と古楽をめぐる手紙』。現在『すばる』で「空耳放浪記」連載中。

(ヘッダー写真:小津夜景)

 

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バックナンバー

  • 12月9日:短日やバターたっぷりのごほうび
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  • 12月7日:寒昴みづのゆらぎの底までも
  • 12月6日:ねずみもちひとは名づけるのが上手
  • 12月5日:冬の波ちょっと小走りになる夕
  • 12月4日:扉絵のごとき静けさ冬の家
  • 12月3日:枯蔦のくるんとしたとこ好きになる
  • 12月2日:落葉ふわっと乗っかってくる上目づかい
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