
《十二月十四日》霜柱バゲット一本買って出る
細長いパンを一本、ひょろ長い生きものでも連れているような気持ちで、両腕にそっと抱えて歩いた。道端の霜柱は、踏むたびにショミ、ショミ、と潰れる。冬の裏通りは、世界のほうが人間よりずっと落ち着いている。その落ち着きの中に、私もすこし混ぜてもらっている。
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細長いパンを一本、ひょろ長い生きものでも連れているような気持ちで、両腕にそっと抱えて歩いた。道端の霜柱は、踏むたびにショミ、ショミ、と潰れる。冬の裏通りは、世界のほうが人間よりずっと落ち着いている。その落ち着きの中に、私もすこし混ぜてもらっている。
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