《十二月十七日》贈られて冬の透明すこし増す
フィリピン人の知り合いにかわいい財布をもらった。ファスナーをあけると、ころん、となにか落ちた。拾うと５ペソ硬貨だ。ご縁の洒落かと思いきや、そうではないという。いわく、フィリピンでは新品の財布にスターター・マネーとして小銭を入れて贈る習慣があるのだ、と。合理と縁起のちょうど境目みたいな風習に、国ごとの価値観の初速がにじんでいて面白い。
著者略歴
１９７３北海道生まれ。句集に『フワラーズ・カンフー』（第８回田中裕明賞）、『花と夜盗』。エッセイ集に『カモメの日の読書』『いつかたこぶねになる日』『ロゴスと巻貝』。そのほか、ヴィオラ・ダ・ガンバ奏者須藤岳史との往復書簡『なしのたわむれ 古典と古楽をめぐる手紙』。現在『すばる』で「空耳放浪記」連載中。
（ヘッダー写真：小津夜景）
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