鈴木明句集『甕』(Amphore)
四六判ドイツ装函入り 232頁
著者の鈴木明(すずき・あきら)氏は、1935年東京・芝三田生れ、現在は東京・品川区在住。1960年、伊丹三樹彦に師事、第2次「青玄」に参加、1969年楠本憲吉主宰「野の会」創刊に参加、1985年「実の会」俳句会創立、指導、1999年第53回現代俳句協会賞受賞、2003年「野の会」主宰継承、現在にいたっておられる。本句集は2011年から2016年までの作品を収録した第5句集となる。跋を高橋睦郎氏が、栞を筑紫磐井、高山れおな、的野雄の三氏がそれぞれ書かれている。句集『甕』には「Amphore」とルビがふられているのでそのように読むのかもしれない。
本句集の装釘は和兎さん。
ドイツ装であるということ、しかも函入り、そしてすべてお任せということで和兎さん、女装もアルコールも断って燃えた。
函は段ボールを使って軽いものとした。これは重厚なものにしてしまうとかえってダサイ。
段ボールに表は白い紙に印刷したものを貼ってタイトルと名前は黒メタル箔。
平面は文字のみ、背と天地に図案を印刷。
函の中にはシルバーの紙を貼る。
本体はドイツ装。
平面の裏と表にはこの甕の小さな図版が空押しされている。
この鋭角的なラインが美しい。
わたしは長い間、この造本に魅了されている。
こちらも平面は白、背のみ図案入り、タイトルと名前は黒メタル箔。
凝った造本であるができるだけ色を抑えることによって、瀟洒な仕上げとなった。
白鳥が羽をひろげたように美しい。
ノドの開きもまことによろしい。
本文も白い用紙を使い、全体的な統一感を出す。
見返し。
この図版は統一的なテーマである。
函にも表紙の背にも使われている。
シルバーの地に銀刷り。
栞は黒の用紙に銀刷り。
扉。
函と表紙。
表紙にはグラシンをまかず、セロファンを巻き、函から取り出したときの印象を大事にした。
シンプルな輝き、しかし本を手にした人に本の物語が展開していく、そんな一冊の句集となった。
鈴木明氏の豊饒な作品世界を瀟洒につつみこんで清廉にしあげた一冊とも。
(ふらんす堂「
編集日記」2016/10/07より抜粋/Yamaoka Kimiko)