《二月五日》鎌倉に實朝忌あり武者むさの府の百五十ももいそとせの汚穢おゑ淨むべく

實朝の忌日は陰暦一月二十七日。今年の陽暦では二月二十四日に當る。武者どもが権謀術数に明け暮れる中、この鎌倉三代最後の将軍は父頼朝にも兄頼家にも似ず、雪のように浄い印象を残している。それだけに不浄を極める武者たちにとっては、死んでもらわなければならない邪魔な存在だったのだろう。

著者略歴

高橋睦郎(たかはし・むつお)

昭和12年12月15日、北九州八幡に生まれる。少年時代より詩、短歌、俳句、散文を併作。のち、新作能、狂言、淨瑠璃、オペラ臺本などを加へる傍ら、古典文藝、藝能の再見を続ける。 詩集『王国の構造』(藤村記念歴程賞)、句歌集『稽古飲食』(読売文学賞)、詩集『兎の庭』(高見順賞)、『旅の絵』(現代詩花椿賞)、『姉の島』(詩歌文学館賞)、『永遠まで』(現代詩人賞)、句集『十年』(蛇笏賞、俳句四季大賞)。 歌集に『道饗』、『爾比麻久良にひまくら』、『虚音集』、『待たな終末』、『狂はば如何に』など。 藝術院會員。2024年に文化勲章受章。 (Photo : Jorgen Axelvall)

 

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  • 2月5日:鎌倉に實朝忌あり武者の府の百五十とせの汚穢淨むべく
  • 2月4日:騙討・私闘・谷戸・窟・辻・行止り狹し鎌倉は
  • 2月3日:鎌倉は死者の骨蔵骨きしみ血糊乾きて春立たむとす
  • 2月2日:冬果つる日の鎌倉を行き行くは幾横死者の骨踏みさくむ
  • 2月1日:淸けきか淸けく非ずいとせめて歌つくる間は淸けくをあらな

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