《八月九日》遠くしづかに法師蟬鉦叩

ボルヘスの「神学者たち」を読む。
昭和二十二年八月九日の虚子句日記は「稽古会、第六日」。「秋簾垂らし小説書く男」「稲妻の衣を透して肌かな」「膝に来て消ゆる稲妻薄きかな」「秋暑く一週間の行事かな」「稲稔り蜻蛉つるみ子を背負ひ」など。虚子はこの年の十二月に『虹』を刊行している。「小説書く男」は虚子自身だろう。ところで二十代で詠んだ旧作「膝に来て消ゆる日ざしや年の暮 尚毅」は、洗脳されたかのごとく虚子の「稲妻」をなぞっている。

著者略歴

岸本尚毅(きしもと・なおき)

1961年岡山県生。著書に『文豪と俳句』『露月百句』、編著『室生犀星俳句集』『新編
虚子自伝』など。岩手日報・山陽新聞俳壇選者、角川俳句賞選考委員。

 

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バックナンバー

  • 8月9日:遠くしづかに法師蟬鉦叩
  • 8月8日:麺麭食うて頬ふくらます夜食かな
  • 8月7日:秋の日の香水はやや甘き香に
  • 8月6日:夕空の暗さを蠅の眼かな
  • 8月5日:この町の朝の片陰登庁す
  • 8月4日:日盛や土に影して軒簾
  • 8月3日:雲うすうす避暑の子どもら匙つかふ
  • 8月2日:終点の町や頭上の雲の峰
  • 8月1日:橋をゆく日除下げたる冷房車

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