《九月一日》糊強きシーツをはがす野分かな

野分で思い出すのが、強い風。家は、山の中腹の一軒家だったので、風を防ぐものがない。強い風で、二階はよく揺れた。いつだったか一階の雨戸が飛ばされて家の下の田圃まで拾いに行ったことがあった。瓦も飛ばされて、雨が降れば洗面器で雨漏を受けていた。実りの秋ではなく台風の秋だった。

●季語=野分(秋)

著者略歴

山口昭男(やまぐち・あきお)

1955年兵庫県生まれ。波多野爽波、田中裕明に師事。 「秋草」主宰。句集に『書信』『讀本』『木簡』(第69回読売文学賞) 『礫』、著書に『言葉の力を鍛える俳句の授業―ワンランク上の俳句を目指して』『シリーズ自句自解Ⅱ ベスト100 山口昭男』『波多野爽波の百句』がある。日本文藝家協会会員

 

 

 

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バックナンバー

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  • 9月16日:フラスコの中へ月光入れてやる
  • 9月15日:恋人は蓑虫つつくばかりかな
  • 9月14日:邯鄲のひたむきすぎる顔であり
  • 9月13日:脇息の派手な紋様鉦叩
  • 9月12日:離れては虫売虫を見てゐたり
  • 9月11日:砂利を掃く熊手の音や萩の花
  • 9月10日:露けしや白を塗り足す白き船
  • 9月9日:脱ぐやうに流るる水や葛の花
  • 9月8日:金網をめつたやたらと押して葛
  • 9月7日:仮名文字のくづれの読めぬ葉鶏頭
  • 9月6日:メルヘンの如くに芒の穂ひらく
  • 9月5日:思ふより太きストロー秋の蝶
  • 9月4日:測量士声をもたずに入る花野
  • 9月3日:腕の虫弾きとばせし夜食かな
  • 9月2日:今日ことに土間のうるめる俵編
  • 9月1日:糊強きシーツをはがす野分かな

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