野分で思い出すのが、強い風。家は、山の中腹の一軒家だったので、風を防ぐものがない。強い風で、二階はよく揺れた。いつだったか一階の雨戸が飛ばされて家の下の田圃まで拾いに行ったことがあった。瓦も飛ばされて、雨が降れば洗面器で雨漏を受けていた。実りの秋ではなく台風の秋だった。
●季語=野分(秋)
著者略歴
山口昭男(やまぐち・あきお)
1955年兵庫県生まれ。波多野爽波、田中裕明に師事。
「秋草」主宰。句集に『書信』『讀本』『木簡』(第69回読売文学賞)
『礫』、著書に『言葉の力を鍛える俳句の授業―ワンランク上の俳句を目指して』『シリーズ自句自解Ⅱ ベスト100 山口昭男』『波多野爽波の百句』がある。日本文藝家協会会員
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