《九月二日(月)》皿の上に冷えていちじく五つあり母ゐなければひとりで食べる

東京の母は今朝リハビリ病院を退院して自宅に戻る。引き続き手紙を書くつもり。宮崎のお菓子も送る。

著者略歴

大口玲子(おおぐち・りょうこ)

1969年東京都大田区生まれ。宮城県仙台市、石巻市を経て、現在は宮崎県宮崎市在住。1998年、「ナショナリズムの夕立」で第四十四回角川短歌賞受賞。
歌集に『海量ハイリャン』、『東北』、『ひたかみ』、『トリサンナイタ』、『桜の木にのぼる人』、『ザベリオ』、『自由』、歌文集に『セレクション歌人5 大口玲子集』『神のパズル』がある。「心の花」会員。宮崎日日新聞「宮日文芸」短歌欄選者。牧水・短歌甲子園審査員。

 

 

無断転載・複製禁止

バックナンバー

  • 9月8日:秋空の深みへ息子の目と耳が大きく開かれゆかむ日曜
  • 9月7日:少しづつわれを冷やして運びゆく高速バスに飲む烏龍茶
  • 9月6日:夢に聴く秋風のおと波のおとわが喘鳴となりて目覚めぬ
  • 9月5日:いきいきと母が話せる明るさの馬酔木には小さき実のなる頃か
  • 9月4日:宮崎はもうふるさとであるやうな夕焼け坂の上から見れば
  • 9月3日:桂川を渡る電車ゆ母とわれ少女となりて遊びゐる見ゆ
  • 9月2日:皿の上に冷えていちじく五つあり母ゐなければひとりで食べる
  • 9月1日:怒鳴られつつ思ふイエスよ人間にどう思はれてもいいと思つた

俳句結社紹介

Twitter