《九月六日(金)》夢に聴く秋風のおと波のおとわが喘鳴ゼンメイとなりて目覚めぬ

東京で暮らしていた小学生の頃、台風の前によく喘息の発作を起こしていたので、小児科の先生に「天気予報さん」と呼ばれていた。深夜にたびたび発作を起こし、電気で薬を噴霧する小さな吸入機が家にあった。深夜に受診が必要なほどの発作はもう二十年以上起きていないけれど、季節の変わり目や疲れている時などたまにかすかに喉が鳴って息苦しくなる。喉がゼイゼイ鳴るからか、大人になるまで「喘鳴」を「ゼイメイ」と読んでいた。

著者略歴

大口玲子(おおぐち・りょうこ)

1969年東京都大田区生まれ。宮城県仙台市、石巻市を経て、現在は宮崎県宮崎市在住。1998年、「ナショナリズムの夕立」で第四十四回角川短歌賞受賞。
歌集に『海量ハイリャン』、『東北』、『ひたかみ』、『トリサンナイタ』、『桜の木にのぼる人』、『ザベリオ』、『自由』、歌文集に『セレクション歌人5 大口玲子集』『神のパズル』がある。「心の花」会員。宮崎日日新聞「宮日文芸」短歌欄選者。牧水・短歌甲子園審査員。

 

 

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バックナンバー

  • 9月8日:秋空の深みへ息子の目と耳が大きく開かれゆかむ日曜
  • 9月7日:少しづつわれを冷やして運びゆく高速バスに飲む烏龍茶
  • 9月6日:夢に聴く秋風のおと波のおとわが喘鳴となりて目覚めぬ
  • 9月5日:いきいきと母が話せる明るさの馬酔木には小さき実のなる頃か
  • 9月4日:宮崎はもうふるさとであるやうな夕焼け坂の上から見れば
  • 9月3日:桂川を渡る電車ゆ母とわれ少女となりて遊びゐる見ゆ
  • 9月2日:皿の上に冷えていちじく五つあり母ゐなければひとりで食べる
  • 9月1日:怒鳴られつつ思ふイエスよ人間にどう思はれてもいいと思つた

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