《一月三日》億兆の遺伝子こぞる船として我在るか我やむざね虚船むなぶね

新年も三日ともなれば茅屋から五分の逗子海岸の沖にはカヌーやヨットなどの小舟も出ている。舟といえば、人間を含む生命体がじつは無数の遺伝子の乗りこぞる舟にすぎないという説に触れたときの驚きはいまなお新鮮だ。その驚きの主体は実としての遺伝子か、虚の舟か。三日夜は恒例で故澁澤龍彦邸でご遺族と。

著者略歴

高橋睦郎(たかはし・むつお)

昭和12年12月15日、北九州八幡に生まれる。少年時代より詩、短歌、俳句、散文を併作。のち、新作能、狂言、淨瑠璃、オペラ臺本などを加へる傍ら、古典文藝、藝能の再見を続ける。 詩集『王国の構造』(藤村記念歴程賞)、句歌集『稽古飲食』(読売文学賞)、詩集『兎の庭』(高見順賞)、『旅の絵』(現代詩花椿賞)、『姉の島』(詩歌文学館賞)、『永遠まで』(現代詩人賞)、句集『十年』(蛇笏賞、俳句四季大賞)。 歌集に『道饗』、『爾比麻久良にひまくら』、『虚音集』、『待たな終末』、『狂はば如何に』など。 藝術院會員。2024年に文化勲章受章。 (Photo : Jorgen Axelvall)

 

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  • 1月5日:在る在らぬ不確かの我何ゆゑに歌はむとすやその歌や何ぞ
  • 1月4日:我思ふゆゑに在るとふその思ふ疑へばうつつ我在りや無し
  • 1月3日:億兆の遺伝子こぞる船として我在るか我やむざね虚船
  • 1月2日:にひ年と日は改まり我が齢改まらずて直に増えゆく
  • 1月1日:昨日こそ髻髪なりしを八十あまり七のにひ年迎ふる我か

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