《一月二日》初夢のポケットにある贋の鍵

鍵を落とした。落としたとき、音がした気がするのに、見あたらない。足もとを探していると、床の模様が、じわりと迷路のようにねじれてくる。ああ。夢の中で、立ちすくむ。手のひらには、冷たい金属の感触が、まだ残っている。目が覚めても、喉の奥に、小さな鍵がひっかかっているような感じがする。不安な朝だ。鍵は、いったい、どこにあるのか。今年が終わるまでに、見つけられるといいのだけれど。

著者略歴

小津夜景(おづ・やけい)

1973北海道生まれ。句集に『フワラーズ・カンフー』(第8回田中裕明賞)、『花と夜盗』。エッセイ集に『カモメの日の読書』『いつかたこぶねになる日』『ロゴスと巻貝』。そのほか、ヴィオラ・ダ・ガンバ奏者須藤岳史との往復書簡『なしのたわむれ 古典と古楽をめぐる手紙』。現在『すばる』で「空耳放浪記」連載中。

(ヘッダー写真:小津夜景)

 

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バックナンバー

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  • 1月4日:初馬卡龍金箔舌尖摩天楼
  • 1月3日:獅子舞の影が煙草をふかしてる
  • 1月2日:初夢のポケットにある贋の鍵
  • 1月1日:初日の出瓦礫の街に風が吹く

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