《十二月二十七日(金)》蜜と乳の流れる土地に約束のあれば喜びも苦悩もありぬ
使徒ヨハネの祝日。小紋潤さんの帰天日。六年前、小学生だった息子は浦上教会の葬儀ミサで侍者をつとめた。今思うと、私と一緒に何度か長崎の病院へ見舞いに行って小紋さんや心の花長崎歌会の皆さんと親しくなり、長崎という土地になじんでいたことが、親元を離れて長崎の高校に進学するという選択のきっかけの一つだったかもしれない。五島の小さな島で生まれ、出生後すぐに船で隣の島の教会に行って洗礼を受けたという小紋さんの霊名は使徒ヨハネ。
著者略歴
大口玲子(おおぐち・りょうこ)
1969年東京都大田区生まれ。宮城県仙台市、石巻市を経て、現在は宮崎県宮崎市在住。1998年、「ナショナリズムの夕立」で第四十四回角川短歌賞受賞。
歌集に『海量』、『東北』、『ひたかみ』、『トリサンナイタ』、『桜の木にのぼる人』、『ザベリオ』、『自由』、歌文集に『セレクション歌人5 大口玲子集』『神のパズル』がある。「心の花」会員。宮崎日日新聞「宮日文芸」短歌欄選者。牧水・短歌甲子園審査員。
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