
《五月三日》虹見ゆる鏡のなかの他殺説
mizuk──語になろうとして、こぼれた息。呼ばれかけた音のかすかな失敗。名ではなく、名のまわりにできた静かなくぼみのようなもの。名づけようとした誰かの中には、音になる直前のかたちが、いまでも残っているかもしれない。けれど、それはなんらかの理由があって、声にはなれなかった。ちゃんと名づけられると、ちょっと困る。たぶん、わたし自身も。
無断転載・複製禁止
mizuk──語になろうとして、こぼれた息。呼ばれかけた音のかすかな失敗。名ではなく、名のまわりにできた静かなくぼみのようなもの。名づけようとした誰かの中には、音になる直前のかたちが、いまでも残っているかもしれない。けれど、それはなんらかの理由があって、声にはなれなかった。ちゃんと名づけられると、ちょっと困る。たぶん、わたし自身も。
著者略歴
1973北海道生まれ。句集に『フワラーズ・カンフー』(第8回田中裕明賞)、『花と夜盗』。エッセイ集に『カモメの日の読書』『いつかたこぶねになる日』『ロゴスと巻貝』。そのほか、ヴィオラ・ダ・ガンバ奏者須藤岳史との往復書簡『なしのたわむれ 古典と古楽をめぐる手紙』。現在『すばる』で「空耳放浪記」連載中。
(ヘッダー写真:小津夜景)
無断転載・複製禁止