《六月二日》籐椅子や風たまゆらのままに在り

十五だった。季節は梅雨。庭先で古い日記帳を燃やした。燃やした理由は、まあ、今となっては「なんとなく」としか言いようがない。思春期特有の整理整頓欲求かもしれないし、あるいは過去の自分に、少しだけ嫌気がさしていたのかもしれない。

著者略歴

小津夜景(おづ・やけい)

1973北海道生まれ。句集に『フワラーズ・カンフー』(第8回田中裕明賞)、『花と夜盗』。エッセイ集に『カモメの日の読書』『いつかたこぶねになる日』『ロゴスと巻貝』。そのほか、ヴィオラ・ダ・ガンバ奏者須藤岳史との往復書簡『なしのたわむれ 古典と古楽をめぐる手紙』。現在『すばる』で「空耳放浪記」連載中。

(ヘッダー写真:小津夜景)

 

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バックナンバー

  • 6月3日:風鈴や裏返りゆく紙の町
  • 6月2日:籐椅子や風たまゆらのままに在り
  • 6月1日:金魚鉢覗くたびまた変はる顔

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