《六月二日》この国に雨の六月あることの恵みつくづく渇く心に

もし雨の六月が無かったら、この国の歌も物語も無かったろう。少なくとも今に残る形とは違っていたろう。『源氏物語』は第二巻ははきぎの雨夜の品定めから小説の結構を整える。品定めはうたあわせはんに通底する。

著者略歴

高橋睦郎(たかはし・むつお)

昭和12年12月15日、北九州八幡に生まれる。少年時代より詩、短歌、俳句、散文を併作。のち、新作能、狂言、淨瑠璃、オペラ臺本などを加へる傍ら、古典文藝、藝能の再見を続ける。 詩集『王国の構造』(藤村記念歴程賞)、句歌集『稽古飲食』(読売文学賞)、詩集『兎の庭』(高見順賞)、『旅の絵』(現代詩花椿賞)、『姉の島』(詩歌文学館賞)、『永遠まで』(現代詩人賞)、句集『十年』(蛇笏賞、俳句四季大賞)。 歌集に『道饗』、『爾比麻久良にひまくら』、『虚音集』、『待たな終末』、『狂はば如何に』など。 藝術院會員。2024年に文化勲章受章。 (Photo : Jorgen Axelvall)

 

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  • 6月3日:雨ごもり我や何せむ日ねもすを何為すならずもの思ひせむ
  • 6月2日:この国に雨の六月あることの恵みつくづく渇く心に
  • 6月1日:鬱の月五月過ぎゆき美しき六月に入る雨の六月

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