
《八月四日》海月浮くいにしへびとの袖のごと
わたしには嘘の記憶がたくさんある。それは、たとえば終戦の日の空気。見ていないのに、何度も本で読んで、感じて、染み込んできた音や沈黙。経験していないはずなのに、体の奥にある。読むことは、誰かの記憶を引き取ることで、終戦を知らないわたしの中にも、あのころの時間は流れている。それは借りものだけれど、わたしのものでもある。そういう終戦が、確かにわたしの中にある。
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わたしには嘘の記憶がたくさんある。それは、たとえば終戦の日の空気。見ていないのに、何度も本で読んで、感じて、染み込んできた音や沈黙。経験していないはずなのに、体の奥にある。読むことは、誰かの記憶を引き取ることで、終戦を知らないわたしの中にも、あのころの時間は流れている。それは借りものだけれど、わたしのものでもある。そういう終戦が、確かにわたしの中にある。
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