《十月十三日》歌の円寂する時ならず短歌溶け語液とならむ時に立ち会ふ

歌の円寂する時は見者迢空の予言というより現状認識だが、円寂以前に解体というのが百年後の現状ではないか。スポーツの日。

著者略歴

高橋睦郎(たかはし・むつお)

昭和12年12月15日、北九州八幡に生まれる。少年時代より詩、短歌、俳句、散文を併作。のち、新作能、狂言、淨瑠璃、オペラ臺本などを加へる傍ら、古典文藝、藝能の再見を続ける。 詩集『王国の構造』(藤村記念歴程賞)、句歌集『稽古飲食』(読売文学賞)、詩集『兎の庭』(高見順賞)、『旅の絵』(現代詩花椿賞)、『姉の島』(詩歌文学館賞)、『永遠まで』(現代詩人賞)、句集『十年』(蛇笏賞、俳句四季大賞)。 歌集に『道饗』、『爾比麻久良にひまくら』、『虚音集』、『待たな終末』、『狂はば如何に』など。 藝術院會員。2024年に文化勲章受章。 (Photo : Jorgen Axelvall)

 

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  • 10月11日:滅びの日告ぐる暦に殉ひて一日に絶えし知恵深き民
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  • 10月9日:結婚の習ひに遠く生きこしを人訝しむ訝しましめ
  • 10月8日:結合といはむ偶然常態となれる奇怪を人うたがはず
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  • 10月5日:わが裡にひとといきもの共棲めばまづ従はむいきもののこゑに
  • 10月4日:たましひの食と思へば老い深く読み貪るは卑しきごとし
  • 10月3日:読書とはたましひの食朝に夕に摂らねば饑る過ぐせば重き
  • 10月2日:この朝の幸福感は早く覚め小読ののち眠れたること
  • 10月1日:新しく悩み新たに苦しめば老い衰ひを嘆く間も無し

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