《五月三日》石鹸玉ごみ食ふ鳩に幸あれと

電車の中、缶の飲物を飲もうとした若者の手元からストローを包んでいた細長いセロファンがひらりと電車の床へ。その向いに座っていたご婦人が若者とセロファンを交互に指さし、「あなたのでしょ」。若者は「あっそうか」と呟きながら席を立ってセロファンを拾った。
昭和十年五月三日の虚子句日記は「尾張、長島」「折り捨てし躑躅漂ふ古江かな」。下五に「古江」という渋い言葉を得て厚みのある句となった。

著者略歴

岸本尚毅(きしもと・なおき)

1961年岡山県生。著書に『文豪と俳句』『露月百句』、編著『室生犀星俳句集』『新編
虚子自伝』など。岩手日報・山陽新聞俳壇選者、角川俳句賞選考委員。

 

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バックナンバー

  • 5月3日:石鹸玉ごみ食ふ鳩に幸あれと
  • 5月2日:鉄の柵錆びてぐらぐら百千鳥
  • 5月1日:素甘あり桜餅より大いなる

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