今瀬剛一著『水戸だより』(みとだより)。
四六判ソフトカバー装グラシン巻き 214頁
俳人・今瀬剛一のエッセイ集である。平成24年(2012)から平成28年(2016)まで主宰誌「対岸」に連載したものを一冊にまとめたものである。「対岸」30周年を記念として刊行されたものである。
今瀬剛一氏というと、大変律儀で真面目なお方というイメージが強い。わたしなども存じ上げてから30年以上の月日、ひたすらそういうお方であると思ってきた。しかしである。このエッセイ集を読んでそのイメージは一新された。確かに真面目で律儀で礼を重んずる方である。だが、けっこうおっちょこちょいでユーモアのセンスもあってかなりの失敗談にも事欠かない。そんな日々が肩肘はらない筆致で書かれているのが本エッセイ集である。
読み出すとこれが面白い。ご本人を知っていると、なおさらへえーっという感じで驚きもある。
読み終えると、遠くの存在であった今瀬剛一という俳人が、とても身近な親しさをもって感じられる楽しいエッセイである。
本句集の装幀は君嶋真理子さん。
グラシン巻きの瀟洒な一冊となった。
グラシン巻きは手作業となり技術をようするものである。
しかし何ともいい風合いがある。
表紙。
見返し。
知的でスマートな一冊となった。
(ふらんす堂「
編集日記」2016/12/2より抜粋/Yamaoka Kimiko)