栗坪和子句集『海嘯(かいしょう)』

四六判フランス装段ボール函入り帯有り 216頁 2句組
著者の
栗坪和子(くりつぼ・なぎこ)さんは、1954年千葉県安房郡生まれ、市川市在住。1984年
加藤楸邨に師事。楸邨亡きあとは
「寒雷」編集長・
矢島房利に師事。2017年
「沖」入会、2019年「沖」新人賞受賞、現在は「沖」蒼茫集同人。「沖」副編集長、俳人協会千葉県支部幹事、市川市俳句協会幹事。栗坪和子さんは、文芸の大手出版社で長いあいだ編集の仕事をされてきた方である。夫君は、文芸評論家の
栗坪良樹(1950~2021)氏である。本句集は、第1句集であり、「沖」の
能村研三主宰が序文、
森岡正作副主宰が跋文を寄せている。
本の装丁は、君嶋真理子さん。
出版社勤務時代にたくさんの本を手がけてこられた栗坪さんであるが、ご自身の本を作るにあたって、ひとつの強い思いがあった。
それはフランス装の本をつくりたいということ。
大手出版社の場合、グラシンが巻かれたフランス装は、編集会議を通らなかったのである。
瀟洒で破損しやすく、汚れたらもうおしまい。
それでいて造本は手作業となりコストもかかる。
一見、そんなに手間暇がかかるとは思えない造本である。
栗坪さんは、そのフランス装をご自身の本でかなえる事にされたのだった。
しかも、段ボール函入りのもの。
こちらも一見無造作にみえるのであるが、いまはこれを作ることのできる製本屋さんも限られてしまっている。
栗坪和子さんの造本へのこだわりは、わたしの願うところである。
かつてはこういう本作りをしてきたが、それを願う人がいなければ、なりたたない。
栗坪和子さんの本作りへの情熱で出来上がった一冊である。

段ボールにラベル貼り。

帯裏の十五句は、辻美奈子さんの選による。


白い表紙のフランス装の本。


「海嘯」のフランス語訳をそっと付した。

見返しもオフホワイト。
清潔感があるが、冷たさはない。

グラシン(薄紙)とともに折り込まれて。

扉。



段ボール箱の天地はホッチキス止め。
糊で張り合わすのではなく、あえてホッチキス止め。(この無骨さがいいのである)
製本屋さんいわく、「ホッチキスで止めるなんていったい何時ぶりだろう」と。
(ふらんんす堂ではかつてよくやってもらったのである)



天アンカット。

栞紐は、水色。


(ふらんす堂「編集日記」2025/12/15より抜粋/Yamaoka Kimiko)