《四月九日》毘沙門がご本尊なる甘茶仏

花祭の翌日、近所の寺でまだ置いてあった花御堂を見る。
昭和七年四月九日の虚子句日記は「燕にて名古屋行」「堀端の柳なびけば水に皺」。材料はありきたり。「水に皺」も手垢のついた言い回しだが、「なびけば」の「ば」が効いている。柳の動きも水の皺もともに風という「因」に対する「果」だ。柳と水の間に因果関係はない。因果のない二つの事象を「ば」でつないだのだ。

著者略歴

岸本尚毅(きしもと・なおき)

1961年岡山県生。著書に『文豪と俳句』『露月百句』、編著『室生犀星俳句集』『新編
虚子自伝』など。岩手日報・山陽新聞俳壇選者、角川俳句賞選考委員。

 

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バックナンバー

  • 4月9日:毘沙門がご本尊なる甘茶仏
  • 4月8日:虚子の忌のおたまじやくしに松の影
  • 4月7日:回る犬止まり糞まり春の暮
  • 4月6日:風車筆立にあり風が来る
  • 4月5日:行く馬が映るぬかるみ春の暮
  • 4月4日:雲を描き寄生木を描き鳥の巣も
  • 4月3日:ポスターの顔に雨粒諸葛菜
  • 4月2日:海澄んでをり陽炎に岸の草
  • 4月1日:うら若く春宵の金かぞへをり

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