《五月二日》ほととぎす来鳴くはひとの巣に産みかへらせ餌飼えがはごくますべく

湘南逗子の谷戸内に移り住むまで、ほととぎすが身近な鳥とは知らなかった。初声を聞いたと思うと、朝も、昼も、夜なかも鳴く。五月から鳴き始めて六月、七月。八月まで聞くことも。ほととぎすの第一の特性は托卵。それもきわめて悪質の。

著者略歴

高橋睦郎(たかはし・むつお)

昭和12年12月15日、北九州八幡に生まれる。少年時代より詩、短歌、俳句、散文を併作。のち、新作能、狂言、淨瑠璃、オペラ臺本などを加へる傍ら、古典文藝、藝能の再見を続ける。 詩集『王国の構造』(藤村記念歴程賞)、句歌集『稽古飲食』(読売文学賞)、詩集『兎の庭』(高見順賞)、『旅の絵』(現代詩花椿賞)、『姉の島』(詩歌文学館賞)、『永遠まで』(現代詩人賞)、句集『十年』(蛇笏賞、俳句四季大賞)。 歌集に『道饗』、『爾比麻久良にひまくら』、『虚音集』、『待たな終末』、『狂はば如何に』など。 藝術院會員。2024年に文化勲章受章。 (Photo : Jorgen Axelvall)

 

無断転載・複製禁止

バックナンバー

  • 5月2日:ほととぎす来鳴くは他の巣に卵産み孵らせ餌飼ひ育ますべく
  • 5月1日:ほととぎす来鳴くを近み裏の山繁り繁りぬ怖ましきまで

俳句結社紹介

Twitter