《六月十三日》卯月野のいつより皐月野さつきのとなりし繁りか野の末ずゑ雨呼ぶらしき
湘南逗子の自然の中に移り住んでの実感の一つは、『徒然草』第十九段の謂う「折節をりふしの移りかはるこそ、ものごとに哀あはれなれ」。晩春はいつか初夏になり、初夏は覚えず梅雨期に入っている。
著者略歴
高橋睦郎(たかはし・むつお)
昭和12年12月15日、北九州八幡に生まれる。少年時代より詩、短歌、俳句、散文を併作。のち、新作能、狂言、淨瑠璃、オペラ臺本などを加へる傍ら、古典文藝、藝能の再見を続ける。
詩集『王国の構造』(藤村記念歴程賞)、句歌集『稽古飲食』(読売文学賞)、詩集『兎の庭』(高見順賞)、『旅の絵』(現代詩花椿賞)、『姉の島』(詩歌文学館賞)、『永遠まで』(現代詩人賞)、句集『十年』(蛇笏賞、俳句四季大賞)。
歌集に『道饗』、『爾比麻久良にひまくら』、『虚音集』、『待たな終末』、『狂はば如何に』など。 藝術院會員。2024年に文化勲章受章。 (Photo : Jorgen Axelvall)
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