砥田隆次句集『因達の里(三)』(いだてのさと3)
四六判ペーパーバックスタイル。126ページ。私家版
「因達の里」と題した三冊目の句集である。
著者の戸田隆次(とだ・たかつぐ)さんは、1939年、島根県松江市に生まれ、現在は姫路市西新在家にお住まいである。この西新在家がすなわち「因達の里」なのである。
句集名「因達(いだて)の里は、播磨風土記の「因達の里 土は中の中なり」から取った。その注釈には、因達の里は八丈岩山の南麓の平野地とある。また、八丈岩山は「因達の神山」と出ている。私の住んでいる姫路市西新在家も、その里の中にある。家の北に八丈岩山があり、北極星が山頂に見える。ここに住んで三十年近くになる。
「三十年近くになる」と書かれたのが、平成9年(1997)だから、砥田さんはすでにほぼ50年をこの「因達の里」で暮らしておられる。第1句集を上梓されてから約20年が経った。20年の間に第1句集『因達の里』に次ぐ、
第2句集『因達の里(二)』、第3句集『因達の里(三)』を刊行されたのである。
句集を出そうと思ったのは、自分の生きてきた証として何かを残せたらと思ったからである。また、この句集は、私が何に心を動かされていたかの記録でもある。
第1句集の「あとがき」の言葉である。
上記に紹介の俳句で、「七時間」におよぶ手術をされたとあるが、もうご回復はされたのだろうか。しかし、その後も淡々と句を作られている著者である。
上の書影写真を見てもわかるように、装幀もまた著者の意向を反映したものとなった。
色は紺、タイトルは砥田隆次さんの手によるもの、造本も同じ。
今回の紺色はいままで以上に深い色となった。
用紙も既刊句集と同じものを用いた。
扉。
紺と白の対比が美しい一冊となった。
夕餉には山の平茸いただけり
掉尾の1句である。
なにかホッとする1句だ。
山の平茸とはきっと近くのあるいは砥田さんが毎日登る山から採集された平茸かもしれない。
山に向ってくつろぐ著者の充足の表情がみえてくる。
(ふらんす堂「
編集日記」2016/7/19より抜粋/Yamaoka Kimiko)