友清恵子詩集『山姥の唄』(やまんばのうた)。
四六判ソフトカバー装。80頁。
見かけはシンプルだが、中身には豊かなものがびっしりと詰め込まれている詩集である。
著者の友清恵子(ともきよ・けいこ)さんは、1936年福井県三国町に生まれる。1959年に福井大学を卒業して東京都公立中学校の教諭となる。その傍ら小説や詩を書き出版して来た。今日まで四冊の小説と詩集と詩画集がある。絵も描かれ本詩集の装画はすべて著者の手になるものである。今年は傘寿(八〇歳)を迎えられその記念にと本詩集を刊行された。
「山姥の唄」と題された本詩集には、老いを生きる女性の肉声が歯切れのよいリズムで語られていく。老いてゆく自身の肉体に立ち向かいそれを歎きながらも彼女の視線は外側に開かれている。老いていく肉体への愁いより、人間の未来を憂うその歎きの方が深いかもしれない。
この詩集には、著者による挿画ところどころに挿入されているのだが、それが素敵である。
いくつか紹介したい。
友清恵子さんは、調布市のお住まいだ。ふらんす堂のご近所の方である。
住所を見ただけでどの辺にお住まいかわかる。友清さんは素敵な老後を送られている。
まず、朝早く多摩川べりを散歩する。お一人ではなく散歩仲間が一緒である。少なかった散歩仲間がどんどん増えていまや20人。歩きたい人が自由に参加する。3キロを歩くという。そして「歌をかならず一曲歌うんです」と。
また、お住まいとは別に駅の近くに「サロン」のお部屋をもっていて、絵の仲間やコーラスの仲間があつまってパーティをしたりおしゃべりをしたりするという。
溌剌と老後を楽しまれている。
気がつけば傘寿。とっくに彼岸に渡っている歳になってしまいました。このところ、歌のおけいことお絵かき(とお酒)に明け暮れて、文筆からはほど遠い日々です。
かろうじて、年一回の「詩集ふくい」への投稿が活字につながる細い径です。読み返してもとても世に問えるしろものではありませんが、これが非才の終活と観念して、八〇歳の記念に出版させていただきます。(またゴミを増やしてごめんなさい。)
一九九九年から二〇一五年まで「詩集ふくい」に掲載された順に、加筆・修正はほとんどせず並べました。老いの勾配も正直に顕れているようで、「山姥の唄」と名づけるゆえんです。
「あとがき」の一部を紹介した。
本詩集には、すてきなおまけがついている。
友清さんは、毎年干支を描き込んだ彩り豊かな年賀状を作られている。
本詩集には、1998年から2016年までの年賀状が紹介されている。全部で19枚。
全部を紹介したいところであるが、いくつか紹介したい。
年賀状は余分ですが、ご笑覧の種に加えました。と「あとがき」に。
本詩集の装丁は、友清恵子さんのご希望を十全に表したものである。
表紙は緑に。
扉。
(ふらんす堂「
編集日記」2016/7/14より抜粋/Yamaoka Kimiko)