仲村折矢句集『水槽』(すいそう)。
四六判上製カバー装。204頁
著者の中村折矢(なかむら・せつや)さんは、昭和42年(1967)年岡山県生れ、現在岡山市在住。平成14年(2002)「狩」入会。平成19年(2007)「弓賞」(特別作品30句)を受賞。平成22年(2010)「狩」同人。本句集は、平成14年から27年までの作品を収録した第1句集である。序句と帯文を鷹羽狩行主宰が寄せ、跋文を「狩」の先輩にあたる田中春生さんが寄せている。
万緑や的中の矢は音たてず 狩行
鷹羽狩行主宰の序句である。
本句集の装釘は君嶋真理子さん。
著者である中村折矢さんの強いご希望を反映した装釘となった。
紺色ベースに、透明カバーで外側をくるんだ。
「水槽」というイメージにどことなく繋がるものがある。
シンプルであることもご本人の希望だった。
表紙は布クロスではなく、光沢のある用紙をもちい、銀箔で押した。
著者の若さにみあった男性的な仕上がりである。
出来上がってご本人はすこしシンプル過ぎたかもとおっしゃったが、かえって清々しい。
見返しはグレーのラシャ紙である。
扉は光沢のあるシルバーの用紙にかぎりなく黒に近い紺のインクで刷った。
花切れは黒。
栞紐はグレー。
著者の若さを反映して、ストイックで若々しい一冊となった。
枯野ゆく見えかけてまた消えたる灯
「見えかけてまた消えたる灯」という中七下五が、枯野のうら寂しさをよく語っている。この灯が自身の心にともった灯であるかのように、一縷の希望がふっと消えてしまったような心許なさを感じさせる。そしてこの景、どこかなつかしい匂いがして、すでにこういう景を経験したことがある、そんな既視感にとらえらてしまう。
(ふらんす堂「
編集日記」2016/10/01より抜粋/Yamaoka Kimiko)