樹冠2016.10.3

 

中嶋夕貴句集『樹冠』(じゅかん)

 

中嶋夕貴句集『樹冠』

四六判フランス装(グラシンなし)。184頁

 

著者の中嶋夕貴(なかしま・ゆき)さんは、1954年生れ。2000年に「鷹」に入会するも退会し、2008年にふたたび「鷹」入会。2011年「鷹新葉賞」を受賞され、現在「鷹」同人である。本句集は第1句集となる。序文は小川軽舟主宰が寄せている。

 

本句集は、グラシンを巻かないフランス装の造本である。
中嶋夕貴さんのご希望だった。
 
装丁者は、君嶋真理子さん。
 
中嶋夕貴句集『樹冠』
 
 
中嶋夕貴句集『樹冠』
 
グラシンを巻いてないゆえに、紙の表情がよくわかる。
 
 
中嶋夕貴句集『樹冠』
 
タイトルは金泊押し。
この用紙の細やかな凹凸感がいい。
 
中嶋夕貴句集『樹冠』
 
帯の用紙は、やや硬質感のあるもの。
わたしはこの種の用紙は特に好きである。
 
中嶋夕貴句集『樹冠』
 
見返しは、表紙に用いたものと同じ用紙の斤量違い。
 
中嶋夕貴句集『樹冠』
 
扉のみ光沢のある用紙を使った。
 
 
中嶋夕貴句集『樹冠』
 
栞紐は緑。
天アンカットである。
 
中嶋夕貴句集『樹冠』
 
 
中嶋夕貴句集『樹冠』
 
中嶋夕貴句集『樹冠』
 
 
爽やかにして瀟洒な一冊となった。
 
(やっぱり帯の紙がいいなあ)とは、yamaokaの心の声である。
こういうマーブル模様の用紙は、昔に比べるとどんどん少なくなっている。
 
 
  子のなきは寧し白花さるすべり
 
この一句に立ち止まった。
「白花さるすべり」に。
著者の複雑な心の陰翳を表すには、「白花さるすべり」をおいてほかにないと思う。
「寧し」と語る心がたどってきた様々な思いを「白花さるすべり」が癒し、浄化する。
あるいはわたしの余計な思い込みかもしれないが、この一句の裏側にある「淋しさ」をも「白花さるすべり」が象徴している。
 
 
(ふらんす堂「編集日記」2016/9/29より抜粋/Yamaoka Kimiko)
 

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