仁科淳句集『妄想ミルフィーユ』(もうそうみるふぃーゆ)

四六判ソフトカバー装帯有り 242頁 二句組
著者の仁科淳(にしな・じゅん)さんは、1971年山形県生まれ、女性である。略歴に♀とあるのだが、この句集を読んだ何人かの方に、「この人男?」って聞かれたのだった。淳という名前からそう思われたのか、女性である。ただ、本句集の「はじめに」にあるように、「引きこもり歴32年」で統合失調症を患っておられる。頁を開くとまずそのことが明かされる。「統合失調症発症 妄想のなかの日々」ともあり、読者はその情報を与えられてこの句集を読みすすむことになる。つまりこの句集で詠まれていることは作者の妄想のなかより生まれたものであると。しかし、それは作者の仁科淳さんが生きてゆくための突破口としての妄想であるのだ。引きこもりという状態にありながら、その妄想を俳句という詩型をとおして仁科さんがおのれの思いを世界へ発信しているのである。それはまた世界へむけた挨拶であり、働きかけであり、表現行為であるのだ。
仁科さんには句集を編むについて、ひとつの拘りがおありだった。
それはご自身が撮った写真を装釘に使って欲しいということ。
装釘家の君嶋真理子さんが、それを仁科さんの希望通りに実現した。

これは写真である。
わたしは装画とおもってしまったのだが。



少し暗めにというのがご希望だった。


カバーをとった表紙。

扉。

本文。

(ふらんす堂「編集日記」2021/6/22より抜粋/Yamaoka Kimiko)