浅井眞人詩集『烏帽子山綺譚』(えぼしやまきたん)。

『仁王と月』が、奈良という土壌から生み出された一大ファンタジーであったとしたら、本詩集はその世界を引き継ぎつつ、さらに発展させその背後にあるテーマを浮き立たせたというべきか。
面白いのは、思想は背後においやられ具体的な生き物や事物が活き活きと動き出し生々流転を繰り返すその世界だ。ディティールにこだわった詳細な記述は、目の前にその世界を立ち上げてみせるが、具体的であればあるほど、それはとらえどころのないものとなって時間の外に流れ出していくような感覚に捉えられる。はなっから読者は不思議な世界に足を踏み入れることになるのだ。
本詩集の装幀は、前詩集とおなじく和兎さん。
装画となった「翡翠」は、いろいろな場面で登場する。



和兎さんは、今回はできるだけ色をつかわず、銀色をテーマカラーにしたい、ということだった。
タイトルは銀の箔押し。





フランス表紙。
折り返しに翡翠を。

見返し、扉は銀の用紙。
扉は白刷り。
かすれて見えにくてもいいからと、白にこだわった和兎さん。

栞紐も銀。

(ふらんす堂「編集日記」2020/7/6より抜粋/Yamaoka Kimiko)