有住洋子著『陸の東、月の西』(りくのひがし、つきのにし)
A5判正寸丸背フランス製本カバー装 160頁
著者の有住洋子(ありずみ・ようこ)さんの散文集である。
原稿を読みながら、レイアウトや本の大きさなどのイメージが出来上がっていった。
著者の有住さんは、版元にいっさい任せてくださった。空間をいかしたものにしたい。美しいものにこだわる著者であるので、美しい一冊にしたい。そんな思いを抱きながら編集作業はすすんでいった。校正者の綿密な出典調べも心強かった。
一冊にできあがったとき、有住さんが喜んでくださったのが嬉しかったが、わたしたちも感慨深くこの一冊を手にしたのだった。
装釘は和兎さん。
この挿画は、16世紀の画家コックの「聖クリストフォロス」と題したものである。
エッチングである。
和兎さんよりのいくつかの提案のなかで、有住さんがとくにこれを気にいられたのだった。
タイトルや著者名ほか文字はすべて金箔押し。
裏側にも「聖クリストフォロス」を配した。
解説によれば、聖クリストフォロスは、旅人の守護聖人。中世後期、この巨人の画像は格別の信望を集め、聖人の画像を見た人は、その日に限り急死するおそれはないと保証された。という。
見返しいったいにも挿画を印刷。
カバーととった表紙。
この本はフランス装であるが、丸背のフランス装というはじめての試み。
製本屋さんが、ある日、「丸背のフランス装ができるようになりました」と言って製本見本をもってきてくれた時から、丸背のフランス装で作りたかったものだ。
折り返しの部分。
扉。
やはり聖人を。
本文・目次。
本文。
巻末の参考文献。
天アンカット。
背の内側の青くみえるところはクーターの部分。
あざやかな青がひそんでいる。
(ふらんす堂「編集日記」2021/7/15より抜粋/Yamaoka Kimiko)