波戸岡旭著『島は浜風』。
46判ソフトカバー装 280頁
俳人・波戸岡旭(はとおか・あきら)さんの自伝的エッセイ集である。
主宰誌「天頂」に連載中のものを「高校入学」までを一冊にまとめたもの。
波戸岡氏は、瀬戸内海の生口島という広島県に属する小さな島で生まれた。中学校までここで育った。
五人兄弟の末っ子、その多感な幼少期をいきいきと綴ったのが本書である。
家の事情のため、高校進学もあきらめていた旭少年が、高校に入学できその生活がいよいよはじまろうとしているところで本書は終わっている。
この後もきっと波瀾万丈の日々がつづくだろうということは、本書を読めば一目瞭然である。
本書の装幀は和兎さん。
波戸岡氏自らが書かれた題字をタイトルに使って欲しいということであった。
ぎっちりと書かれた本文であるが、読み始めると一気に読んでしまう。
筆力があるのである。
エッセイの最初の部分は、くだもののタイトルではじまる。「桑の実」「唐柿(無花果)」「富有柿」「温洲みかん」「木いちご」など、どれも島で採れる果物で、波戸岡旭さんの大好物である。温暖で豊かな自然が見えてくる。しかし、果物にまつわる思い出は悲喜こもごもである。
(ふらんす堂「編集日記」2019/12/5より抜粋/Yamaoka Kimiko)