四ッ谷龍著『田中裕明の思い出』 。
46判ソフトカバー装。190頁。
俳人四ッ谷龍さんのエッセイと評論からなる著書である。
タイトルに「田中裕明の思い出」とあるように、収録されているものはすべて俳人田中裕明について書かれたものである。三部構成となっており、Ⅰは田中裕明との交流を綴ったもの。Ⅱは講演をまとめたもの。Ⅲは、作品をとおしての田中裕明論である。著者によって、非常にすっきりとしかもよく考えられて編集されており、頁を開いたとたんすーとわたしたちは読みすすんでいってしまう。
Ⅰには田中裕明と著者との関係が書かれているのだが、そこに語られている田中裕明という人間の魅力もさることながら、なによりも田中裕明を見る著者の澄みきった眼差しにわたしたちは心打たれてしまうのだ。そこにはなんのはからいもなく、田中裕明に向き合う著者の一途さがあり、ともに創作をするものとしての真摯なやりとりがある。そういうきれいな空気を吸いながらわたしたちはこの一冊を読みすすむことになる。
ウイリアム・モリスである。
カバーをとった表紙にも。
扉にも。
天アンカットで栞紐をつけて。
エレガントな一冊。
このエレガントさは、田中裕明、四ッ谷龍、お二人に共通しているものだ。
(ふらんす堂「編集日記」2018/8/24より抜粋/Yamaoka Kimiko)