中原道夫句集『彷徨』(うろつく)。

菊判変型コデックス装 128頁
俳人・中原道夫(なかはら・みちお)さんの第13句集である。これまでの句集に収録された海外詠に未収録の海外詠を加えて一冊にしたものである。4句組であるからかなりの読みごたえである。また、すべて可能な限り正字表記であるので、視覚的にも華やぎのある紙面となっている。
本句集の装釘は和兎さん。
ハードなコデックス装という永年のわたしの夢を中原道夫さんの句集によって和兎さんが実現した。
著者の中原道夫さんは、何もおっしゃらずに造本、装釘を任せてくださった。
そのことも大変有難い。

背丁が剥き出しで丁合の文字がそのまま見える造本である。

3㎜以上はある厚いボール紙にタイトルは空押し。
かなり厚目の金版をつくって押してもらったもの。
タイトルの題簽は中原道夫さんによる。

「UROTUSKU」というルビのみ赤メタル箔

帯は3センチほどの紙を巻いたもの。

裏でぞんざいにテープで留めてある。
これは、和兎さんによると、破いてもらっていいようにわざとぞんざいにした、ということである。

わたしはどうしても破れなくて、こんな風にそっとテープを剥がしてしまったのだけど、本を読むまでの演出としては「破ってほしい」という和兎さん。


見返しは、野崎義人氏の蜥蜴の写真。
これは中原さん提供のもの。
「うろつく」という句集名によくあっているでしょ。

扉。
本句集では赤が差し色である。

コデックス装は開きがまことによろしい。ノドまで完全にひらく。

綴じ糸は、赤。

その綴じ糸があえてみえるのもこの本の遊び。

本文と表紙のこの一体感。
シャープな線が惚れ惚れするほど美しい。


コデックス装というやや特殊な大胆かつスタイリッシュにしてぶらっきぼうな造本。
誰の本でも実現できるものではなく、中原道夫という俳人とのコラボレーションによって実現できたものと思っている。
(ふらんす堂「編集日記」2019/3/13より抜粋/Yamaoka Kimiko)