A6判(文庫サイズ)フランス装グラシン巻帯あり 80頁
小さな本である。「ふらんす堂文庫」の大きさである。
どのくらい小さな本かといえば、
インク壺と並べてみた。
瀟洒かつ小さな一冊を、著者である五六歩(ごろっぽ)さんは、望まれたのだった。
著者の五六歩さんは、1949年名古屋市生まれ。2011年「卯波俳句会(現「俳句集団縷縷」)入会。2012年「船団の会」に入会し、2020年の散会まで会員。五六歩さんは、2005年にパーキンソン病を発症し、現在も闘病をつづけておられる方である。今回句集をお作りするにあたって、担当の文己さんとの連絡がすこしたいへんな部分もあった。
しかし、こうして無事に一冊になったことを喜びたいと思う。
本句集の装釘は、君嶋真理子さん。
五六歩さんのご希望で、画家・小川博の装画を表紙絵として用いた。
細密に描かれたペン画である。
掌にのるようなサイズであるが、手作りのたいへん凝った一冊である。
本当に小さい。
しかし、出来上がってきたときに、「ああ、いいわねえ」と言って思わず胸にだきしめたほど、素敵な一冊となった。
「こういう本っていいわねえ。おしつけがましくなく、どうだっていう感じでもなく、そっとそこに置かれていても、本自体が語り出すような一冊」とわたしはうっとり。
製本屋さんは、「ふらんす堂さんがまた凝った本をつくる」と言いながら頑張ってくれた本である。
製本屋さんのAさんは電話口で言う。「なんせ手作業ですからねえ」と。
丁寧に折られた袖。
扉。
美しい一冊となったことを五六歩さんは、たいへん喜んでくださった。
(ふらんす堂「編集日記」2021/8/10より抜粋/Yamaoka Kimiko)