常澤俶子句集『探梅』(たんばい)。
四六判ハードカバー装。204ページ。
著者の常澤俶子(つねざわ・あつこ)さんは、昭和18(1943)年兵庫県生まれ、神戸市在住。平成元年(1989)に俳誌「天狼」入会、平成7年(1995)俳誌「狩」入会、平成20年(2008)狩同人となる。本句集は、平成7年(1996)より平成27年(2015)までの327句を収録した第1句集である。鷹羽狩行主宰が序句、帯文、鑑賞5句を寄せ、「狩」の先輩の藤本朝海さんが跋文を寄せている。
序句は、
常の道より探梅のはじまれり 狩行
苗字の一字と句集名を詠み込んだもの。
本句集の装幀は君嶋真理子さん。
カバーの梅の花は、辻が花模様のような味わいがある。
君嶋さんの本領が十全に発揮された装幀となった。
タイトルは金箔押し。
見返しはかすかな紅色。
表紙は暖かみのある白。
横に織目がはしる。
文字は金箔押し。
扉。
裏にも梅を配して。
紅白の梅をおもわせる清雅な一冊となった。
牡丹雪母のことばのやうに降る
牡丹雪は水気をたっぷり含み重さのある雪である。冷たい雪であるというよりも春の温かさをその内に宿している。大粒であるから存在感もある。やさしく地面を濡らしてすぐに解けてしまう。「母のことばのやうに」という比喩の卓抜さによって、「母のことばのやう」が読み手のなかで増幅し繰り返される。牡丹雪以上に。牡丹雪は母のことばであり、また母そのもののぬくもりでもあり、母の気配に満ち満ちたものである。母のことばは慈愛と化し、やさしく降りつづく。
(ふらんす堂「
編集日記」2016/7/7より抜粋/Yamaoka Kimiko)