津志田武句集『帽子』(ぼうし) 。
著者の津志田武(つしだ・たけし)さんは、昭和16年(1941)年盛岡市生まれ、盛岡在住、平成19年(2007)に俳誌「樹氷」(小原啄葉主宰)に入会し、平成20年(2008)に同人、現在は「樹氷」の副編集長をしておられる。本句集は平成20年(2008)から平成27年(2015)までの作品を収録した第一句集である。序文を小原啄葉主宰が寄せている。
序文によると平成2年(1990)に小原啄葉指導の「俳句講座」で熱心に俳句をまなばれていたのだが、エリート銀行員であった津志田武さんは、転勤を重ねながら栄進され猛烈な忙しさの中、一時俳句から遠ざかったとある。定年退職後、ふたたび俳句に戻って熱心に俳句に取り組むようになる。
本句集の装幀は君嶋真理子さん。
「帽子」というタイトルに、君嶋さんはいろんなラフを用意してくれた。
津志田さんは、ご自身も木版画の趣味があり、本句集を六葉の版画でもって飾られた。また奥さまは、書家である。
落葉踏み妻の日展みて帰る
という句が収録されている。そんな芸術を愛するご夫婦であるゆえ、装幀もご希望がおありのご様子。結局、たくさんのラフの中から選ばれた出来上がったのがこれ。
実は左の方にいる帽子を被った人間は、津志田さんが君嶋さんのラフに描き加えたものだ。それがなかなかいい。
横に縞のはいった用紙にグレーであわく印刷した図柄をうしろか型押ししている。
だからよく見るとこの図柄は飛び出しているように見える。
タイトルは黒メタル箔。
表紙は、やや紫がかったブルーグレーとでも呼ぶべきか。大人の色であり、ダンディな男性にこそふさわしい色である。
背は銀箔押し。
見返しは、ややブルーよりの淡いグレー。
花布は青。
スピンも青。
シンプルなスマートさで出来上がった一冊。
まさに津志田武さんそのもののような出来上がりとなった。
晩年のまだ輝ける冬帽子
掉尾におかれた句である。
ご自身への励ましと希望とにあふれ、清々しい一句だ。
「冬帽子」だからこそ、丹田にこうぐうっと力が入る。
(ふらんす堂「
編集日記」2016/6/23より抜粋/Yamaoka Kimiko)