景色2018.11.2

 

有住洋子句集『景色』(けしき)

 

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A5判変型ソフトカバー装 134頁

 

著者の有住洋子(ありずみ・ようこ)さんは、1948年東京生まれ、13年の滞米生活後、1996年より黒田杏子主宰指導の下で俳句をはじめる。その後、橋本榮治代表中心の句会に参加。現在「枻」同人、個人誌「白い部屋」発行。俳人協会会員。本句集は、第1句集『残像』 に次ぐ第2句集である。『残像』が2009年の発行なので、すでに10年ちかい時間が流れた。

 

 

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各章の見出しも、それもまた景色の一環である。
水平、死者、真下、回廊、錆、端、貌、一面、こう書いてきて、それはたまたまなのかもしれないが、「貌」以外すべてイの音がふくまれていることに気づいた。「景色」もまた然り)
これは著者が計らったことではないと思うが、面白い。

 

 

本句集は著者の有住洋子さんのたつてのご希望によって、Sam Francis (サム・フランシス)の作品を装画として使用した。
有住さんがお持ちの画集を著作権協会の了承を得てしようしたものである。

 

装幀は和兎さん。

 

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こうして使用してみてつくづくと思ったのだが、たいへん良い一冊となったということ。
大人の本、という趣がある。
作品が呼び起こす力というものをわたしは思った。

 

「景色」というややニュートラルな言葉が、存在感あるものとして立ち上がってくるのだ。
この作品を装画にしたい、という有住さんの大人の美意識を感じたのだった。

 

 

 

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一見、紺色が強調されているのだが、よく見るとそこはかとない紅色や黄色などがある。

 

当初はグラシン巻きでいく予定だったが、有住さんとご相談してグラシン巻きをやめた。
装画の持っている迫力を失いたくなかったのだ。

 

こういうのをあれこれ考えるのが本づくりの醍醐味だ。

 

 

 

 

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帯は透明なものにして、装画をできるだけ見せるようにした。

 

 

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表紙にもあしらう。

 

 

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見返しは表紙と同じにして、できるだけシンプルに。

 

 

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扉にも少し。
すべて和兎さんの按配である。

 

 

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本文のレイアウトは天地そろえにせず、なりゆきにして上の方へ。

 

 

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堂々たる一冊となった。

 

句集にサム・フランシスの絵を用いるのはワクワクした。
ハードカバーにせずにソフトカバーにしたのも、正寸ではなく変型にしたのも良かったと思っている。

 

こういう一冊になかなか出合えない。
そんな本づくりをさせてもらった嬉しい句集『景色』である。

 

 

 

(ふらんす堂「編集日記」2018/10/31より抜粋/Yamaoka Kimiko)

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