後藤立夫氏の遺句集『祇園囃子』(ぎおんばやし)。
「諷詠」を継承した和田華凜さんと久子夫人の心づくしの一冊である。
四六判ハードカバー装 三句組 246頁
著者の後藤立夫(ごとう・たつお)氏は昭和18年(1943)7月14日生まれ、平成28年(2016)年6月26日逝去。享年74歳であった。本句集は平成17年(2005)より平成28年(2016)までの作品を収録。
第1句集『見えない風』、第2句集『祭の色』につぐ第3句集であり最後の句集となった。
頁をひらけば、まず立夫氏の明るい笑顔に出会う。
スマートな明るさをもったお方でサービス精神があり人を笑わせるのが上手だった。
句集名は「祇園囃子」。
本句集は12章に年代別に分けられ、その章の扉に立夫氏の絵で飾った。
全部を紹介したいところだが、数枚にとどめる。
本句集の装幀は君嶋真理子さん。
第一句集『見えない風』に引き続いての装幀となった。
君嶋さんに心掛けて貰ったことは、遺句集であってもどこか華やかさをとどめてもらいたいということ。
本来なら遺句集であるので、金箔は避けたいところであるが、あえてタイトルを金箔にした。
金箔といってもツヤなしの金箔である。
この金箔が、山車の灯りと月と響き合い哀愁を感じさせる。
用紙もダンディでおられた立夫氏にふさわしいモダンなもの。
黄が好きでばらの黄色はもつと好き
本文にある一句である。この「黄」という言葉を使った俳句はかなり多い。
背はツヤなし金。
平は空押し。
見返しは黄色の斑が入ったもの。
扉。
花布は黒。
栞紐はグレー。
本文に12葉のカラー口絵が入るので、全体の仕上がりの色合いは明るさをとどめながらも落ちついたものになるようにということに心をくだいた。
立夫氏のお心に適うものになっただろうか。
喜びのお顔を見ることができないのが残念である。
(ふらんす堂「編集日記」2017/5/29より抜粋/Yamaoka Kimiko)