岸本尚輝の吟行日記42016.6.29

 

俳句実践講座

岸本尚毅さんが指導をされている句会を取材しています。
実践の場で俳句をどうつくるか、大変参考になると思います。

 

●岸本尚毅作
寒鯉の触れ合ひもして大きかり
野より水引きて此処なる氷かな
寒林や氷うかべて水動く
人日やもつとも鯉をいとほしみ
枯芝の尽きたるところ水に鯉
寒鯉の鼻を浮かべて甘ゆるか


●岸本尚毅特選
ストーブの明るさ外の明るさ  京子

●尚毅選
青き空霞むことなき寒さかな   定生
揃へられ七草のやや萎えてをり  京子
あをあをと池凍りをり日の高く  美緒
池凍り厠の水は凍らざり  章
冬滝の水飲みにくる鴉かな  麻
探梅のあてのはづれし五六人  八江
結構なお庭お座敷初句会  定生
水鳥に小さき橋は六つほど  八江
窓の外は生きもののこゐ七日かな  京子
外套を丸めて置きし戸口かな  京子
雪のなき雪吊りを見る寒さかな  麻
割烹着きて枯園におでん売る  章
枯づるや邸を囲む煉瓦塀  定生(蔓)
水鳥のすつくと立ちて脚長し  麻
園にしてここは峠ぞ冬木の芽  昌子
人日の鴉騒ぐにまかせたり  麻
美しき日差し枯山吹も受け  章
セーターや句会に社長本部長   定生
人日のきつねうどんを食べにけり   紀子
水洟のさらにうどんを食ふたれば  章
ところどころ氷りて池の大いなる  定生
日に解けて月に氷りしもののあり   八江
各々のうしろにコート畳み置く  章
低くきて高く去る鳥七日粥  八江
悴かむ手書きたる文字のはねあがり   麻
日に風に遠き氷のかがやけり  麻
常盤木のなか裸木の幹太し  董子
髭面にいつもの服や初句会   定生


●岸本尚毅氏の講評

岸本尚毅の吟行日記

非常に良い句が多かったですね。人事句もあり、人間の出て来ない良い句もあったりで、おおまかな句もあるし細かい句もあるという、初句会として気合いがは いっていたのではないかと思います。いただかなかった句でひとつ気になったのは「懐かしと告ぐべき今日の寒さかな」これは「告ぐべき」ではなくて「懐かし と言ふべき今日の寒さかな」でいいんじゃないかと思います。「太陽の当たるところにゐて寒し」この「太陽があたる」という言い方はおかしいですね。「光が あたる」のは分かるんだけど、太陽が当たったら火傷してしまいますよね。当たるというのは「日光」とか「月光」であって太陽そのものは当たらないですね。

◎ストーブの明るさ外の明るさよ  京子
これはちょっと驚いた句です。「ストーブが明るい」というのはいつも妙に気になっていることで、昼のストーブなんでしょうね、昼の家の中がちょっと暗いな かでストーブが赤々と燃えていて、ふと外を見ると外には外の明るさがあるという、そういう感じっていうのはいいですよね。

○冬滝の水飲みにくる鴉かな  麻
これはなんというか鴉が俗でなくきれいな鴉の句ですよね。

○枯づるや邸を囲む煉瓦塀  定生
なんというか、枯づると煉瓦塀、余計なものが無くていいですね。

○水鳥のすつくと立ちて脚長し  麻
別に脚の長い鳥ではないんだけれども意外な高さっていうことが確かにありますよね。

○美しき日差し枯山吹も受け  章
日差しを「受け」という言い方はだいだいあんまり好きではないんですが、この句は、なんかこう句またがりで物体がくつろいでいる、という気がしますね、「枯山吹」が効いてます。

 


●おことわり
このページは、俳句愛好者の作句の勉強の一助とする目的で、岸本尚毅さんが句友諸氏と個人的に行っている句会の様子を紹介させて頂くものです。この句会は 私的な会であり、部外者には一切オープンにされておりません。そのため日付・場所・作者名は非公開です。お問い合わせはご遠慮ください。引用された作品の 著作権は、実在する各作品の作者に帰属しますのでご注意ください。

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