母のことばのやうに。2016.7.8

 

常澤俶子句集『探梅』(たんばい)。

常澤俶子句集『探梅』(たんばい)。

四六判ハードカバー装。204ページ。
 
著者の常澤俶子(つねざわ・あつこ)さんは、昭和18(1943)年兵庫県生まれ、神戸市在住。平成元年(1989)に俳誌「天狼」入会、平成7年(1995)俳誌「狩」入会、平成20年(2008)狩同人となる。本句集は、平成7年(1996)より平成27年(2015)までの327句を収録した第1句集である。鷹羽狩行主宰が序句、帯文、鑑賞5句を寄せ、「狩」の先輩の藤本朝海さんが跋文を寄せている。
 
序句は、
常澤俶子句集『探梅』(たんばい)。
 
常の道より探梅のはじまれり   狩行
 
苗字の一字と句集名を詠み込んだもの。
 
 
本句集の装幀は君嶋真理子さん。
カバーの梅の花は、辻が花模様のような味わいがある。
君嶋さんの本領が十全に発揮された装幀となった。
 
常澤俶子句集『探梅』(たんばい)。
 
常澤俶子句集『探梅』(たんばい)。
タイトルは金箔押し。
 
常澤俶子句集『探梅』(たんばい)。
見返しはかすかな紅色。
 
常澤俶子句集『探梅』(たんばい)。
表紙は暖かみのある白。
ちょうど白梅のような色である。
 
常澤俶子句集『探梅』(たんばい)。
横に織目がはしる。
 
常澤俶子句集『探梅』(たんばい)。
文字は金箔押し。
 
常澤俶子句集『探梅』(たんばい)。
扉。
 
常澤俶子句集『探梅』(たんばい)。
花切れは金、スピンは白。
 
常澤俶子句集『探梅』(たんばい)。
 
常澤俶子句集『探梅』(たんばい)。
裏にも梅を配して。
 
常澤俶子句集『探梅』(たんばい)。
 
紅白の梅をおもわせる清雅な一冊となった。
 
 
  牡丹雪母のことばのやうに降る
 
牡丹雪は水気をたっぷり含み重さのある雪である。冷たい雪であるというよりも春の温かさをその内に宿している。大粒であるから存在感もある。やさしく地面を濡らしてすぐに解けてしまう。「母のことばのやうに」という比喩の卓抜さによって、「母のことばのやう」が読み手のなかで増幅し繰り返される。牡丹雪以上に。牡丹雪は母のことばであり、また母そのもののぬくもりでもあり、母の気配に満ち満ちたものである。母のことばは慈愛と化し、やさしく降りつづく。
 
(ふらんす堂「編集日記」2016/7/7より抜粋/Yamaoka Kimiko)
 

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