大石悦子句集『百囀』(ひゃくてん)。
四六判ハードカバー装 232頁 二句組 令和俳句叢書
俳人・大石悦子の第6句集となる。平成24年(2012)から平成31(2019)年までを収録。
句集名の『百囀』は、
画眉鳥(ぐわびてう)を加へ百囀ととのひぬ
よりの一句である。
本句集を一読すれば、追悼の句が多いことに気づく。肉親や俳人との別れがひとつのテーマでもあるかのように句集の最初のほうから終わりまで死者へささげた句が貫いている。師・先輩、句友など石田波郷の師系につらなる俳人や所属する結社「鶴」の仲間への追悼句である。また、肉親である兄、妹への追悼句もある。昭和13年(1938)生まれの今年81歳を迎えられる著者であるなら、そこに沢山の別れがあることはある意味必然でもある。
本句集は「令和俳句叢書」の第1回配本として刊行された。
装幀は和兎さん。
和兎さんは、この「赤」にこだわった。
朱にちかい日本的な赤である。
キイカラーといってもよい。
全体の仕上がりが華やかであっても子どもっぽくあるいは乙女チックにならないように心がけた。
表紙もおなじ赤で。
実は最初は、「花紺」だった。
わたしも好きな色であるが、「花紺」と呼ばれる着物の布の色がある。華やかな紺の色だ。
それにしましょうと大石さんに申し上げ、納得していただいたのだが、
和兎さんは、それでもいいけど、やはり「赤」がいいと。
クロスを発注してから、はたと悩んだ。
花紺もすてきだが、大石悦子という俳人にはやはり「赤」がいいと。
そこで急遽変更をしたのだった。
大人の女性にふさわしい赤だ。
見返しは模様のある透明感があるもの。
扉は光沢のある用紙に一色刷り。
黒ではなくかぎりなく黒にちかいチャコールグレー。
花布は金、栞紐は白。
金箔の文字が品格をあたえた一冊となった。
(ふらんす堂「編集日記」2020/8/24より抜粋/Yamaoka Kimiko)