出発~ポロッサからサロキヒへ~2022.4.5

 

 

 

詩人・そらしといろと歌人・松野志保によるつれづれ連載。旅の出来ない日常から抜け出してふたりの作り出すキャラクターが架空の世界を旅します。
SNSで知り合った顔の知らないふたりが、ひとりは最北から、ひとりは最南端から――果たしてふたりは世界の真ん中で出会うことができるのか。手紙のように作品を交換して一歩ずつ近づいていくふたり。
月2度の静かな熱の交換をお楽しみに。

 

 

 

出発~ポロッサからサロキヒへ~

〈J〉

僕が住むポロッサは

冬は雪深いところ

草木の新芽から

雪解けするところ

 

気ままに流れ着いた

電波のふちで

共鳴しあった君の

顔は知らない

声も知らない

君に出会うため

北に位置するポロッサから

南へ

ゆっくりと南へ旅をする

 

空を行けば

すぐにたどり着く

あの町を目標に

日付だけ定めて

僕らはそれぞれの

リズムとテンポで向かう

 

こんなにも長い

旅のはじまり

あまり旅に慣れない

僕の旅支度の

荷物は多いのか

少ないのか分からない

旅の資金も多いのか

少ないのか分からない

君のことも

深くは知らないから

少しずつ

分かってゆきたい

 

雪解けのポロッサから

海を渡って南下し

サロキヒへ向かう

真っ白くあかるい

花盛りのリンゴ畑に

ふんわりと

たたずんでみたい

 

 

Distance to you: 20,000km left.

 

――そらしといろ

 

 

 

 

作者略歴

そらしといろ(そらし・といろ)

Twitter:@cv1016 ブログ:citron voice
1988年生まれ、埼玉県出身。2013年、思潮社より刊行した第一詩集『フラット』(思潮社)で、第24回歴程新鋭賞を受賞。心が萌えたときの感覚を言葉で掴もうとしている。詩集『暁を踏み割って行く』(ふらんす堂)、『もうずっと静かな嵐だ』(ふらんす堂)

 

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