ジャミノフ *言葉は、祈りは、遠くへと2023.2.25
ジャミノフ *言葉は、祈りは、遠くへと
〈J〉
世界を半分ずつ
旅してきて
今
道と道とが繋がって
空は一枚に縫い合わさった
海は世界を
大きなひと雫で囲んでいる
僕は本当に君と出会うのだと
したためたメッセージは
紙飛行機のマークのボタンから
君の心へと届いて
僕も着陸のような
受信の日々を待った
***
それほど大きくはない
ジャミノフの駅で
僕は君を見つけた
言葉から想像していた
輪郭が立ち上がり
思わず
握手の右手を差し出していた
ゆっくりとして しっかりと
握り返してくれる
***
港の見える
親しみやすいレストランで
美味しい海産物を食べながら
僕たちは
この一年間と
そこまで続いてきた
過去の時間とを
緩やかに往き来した
君はあらゆる祈りを
背負っても潰れずに
ここまで来て
どこまでも行くのだろうと
予感する
けれどこれからの
時間の片隅には
僕の人生も刻まれてゆく
重たくなるだろうか
だとしても
旅の途中で買った
手巻きの腕時計を
君の左手首へ捧げて
僕もまたお揃いの腕時計を
左手首に巻いて
君の人生に耳を傾けてゆく
時針が示す現在に
君の静かな眼差しの祈りが
未来と過去を癒してゆくよう
僕も少しだけ君の祈りに加わって
Distance to you: 0km left.
――そらしといろ
作者略歴
Twitter:@cv1016 ブログ:citron voice
1988年生まれ、埼玉県出身。2013年、思潮社より刊行した第一詩集『フラット』(思潮社)で、第24回歴程新鋭賞を受賞。心が萌えたときの感覚を言葉で掴もうとしている。詩集『暁を踏み割って行く』(ふらんす堂)、『もうずっと静かな嵐だ』(ふらんす堂)
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