*僕は、君は、灯台となって2023.3.21

 

 

 

詩人・そらしといろと歌人・松野志保によるつれづれ連載。旅の出来ない日常から抜け出してふたりの作り出すキャラクターが架空の世界を旅します。
SNSで知り合った顔の知らないふたりが、ひとりは最北から、ひとりは最南端から――果たしてふたりは世界の真ん中で出会うことができるのか。手紙のように作品を交換して一歩ずつ近づいていくふたり。
月2度の静かな熱の交換をお楽しみに。

 

 

 

*僕は、君は、灯台となって

〈J〉

季節は常に隣り合って

わずかに重なりながら

別れてゆく

ようやく君と隣り合って

歩いた海沿いの町の

風は南風になってきた

北上してくる春に

君との旅が始まり

終わろうとしている

旅と冬

一年間のうちに

交わした言葉で

紡いだ友情は

これからも深まってゆく

季節のように

隣り合って 少し重なって

別れつつも 巡り合って

 

***

 

この先 僕は

これほど長い旅は

できないかもしれない

その分 この旅は

僕の一生を照らす

灯台になるだろう

君の手の温もりや

話し方の呼吸が

僕を元気づけてくれる

二度と会えない訳でもない

世界がどうなっても

僕らが生きている限りは

或いは死んでしまっても

どこかの世界で

ばったりと再会するかもしれない

とにかく

生きていこう

僕は君の

君は僕の

灯台となって

お互いの心に立ち続けよう

迷いそうになっても ならなくても

またメッセージを送り合っていこう

 

***

 

いつかまた

このひと月のような

君との二人旅をしてみたい

この長かった旅の

名残惜しさを胸に

僕は

今は一人で

春と共に北上して

ゆっくりと

雪解けした故郷へ

帰ってゆくよ

 

***

 

本当に楽しくて仕方がない日々を

君と経験できて嬉しかった

またどこかの町で会おう

生きていこう

共に

 

 

Starting a New Journey…

 

――そらしといろ

 

 

 

 

作者略歴

そらしといろ(そらし・といろ)

Twitter:@cv1016 ブログ:citron voice
1988年生まれ、埼玉県出身。2013年、思潮社より刊行した第一詩集『フラット』(思潮社)で、第24回歴程新鋭賞を受賞。心が萌えたときの感覚を言葉で掴もうとしている。詩集『暁を踏み割って行く』(ふらんす堂)、『もうずっと静かな嵐だ』(ふらんす堂)

 

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