「第11回桂信子賞」の報告をしたい。
兵庫県伊丹市の柿衞文庫で午後1時半より行われた。
受賞者は、瀬戸内寂聴さんと神野紗希さん。
瀬戸内さんは、法話のご予定があってお見えにならず直筆のメッセージが読み上げられた。
神野紗希さんは、俳人・神野紗希のできるまでを、今日までに出会った俳句とその学びを中心にご自身の経験をまじえて清々しく語られたのだった。
「柿衞文庫を修復するこの機会に、桂信子賞は、この第11回をもってひとまず終わりにしたい。修復後に再会するかどうかをかんがえたい」
とご挨拶。
わたしは驚き、会場も一瞬どよめく。
受賞者の神野紗希さんとはご縁がふかく、この受賞をとても喜んでおられた坪内さんである。
選考委員の宇多喜代子さん。
「桂信子賞は終わりとなるが、終わりは始まりである、とわたしは思っている。若い人たちを中心にきっと再開されるのではないか」
「97歳の現役俳人と36歳の若い俳人、おふたりの受賞をともに喜びたい」
選考委員の黒田杏子さん。
受賞された瀬戸内寂聴さんとの出会いから今日までの交流の日々を、深い思いをもって語られた。日頃聞けないような驚くべきエピソードが満載で会場はしいんと聞き入っていた。
「紗希さんを見ていると、しなやかに自然にやっている、いい時代になったのだなあと思う。我々の母親や我々が俳句をつくり続けてきので、今の紗希さんがあると思う」
欠席をされた選考委員である寺井谷子さんからは、送られたきたお祝いの言葉が代読された。
受賞者・神野紗希さんの講演。
「俳句と出会ったのは16歳、そしていま思うのは、俳句は否定の詩ではなく肯定の詩であるということです」
若い受賞者である神野紗希さんに会場は惜しみない拍手をおくっていた。
記念撮影。
いまは女が力を持って元気である。だから、女だけのイベントや、女だけのなにか、ということに男性側から逆差別ではないか、というような発言もあるようだ。そういうことからいえば、これからは男女にあまねく平等に開かれたもの、が要求されてくるのではないか。そんな発言もあった。たしかに見渡せば、女は元気いいなあ、老いも若きも、である。
理事長の坪内稔典さん、会場でも端の方で恥ずかしそうにしておられたのが、ちょっと今の時代を象徴しているようで、わたしはそういう存在のありようもいいなあと思いながら笑ってしまったのだった。
ごめんなさい、坪内さん。
席にすわって授賞式が始まるのをまっているとき、わたしの隣に座った女性が、「yamaokaさんですか。ブログ楽しみに毎日見てます」って声をかけて下さった。お名前をうかがったところ、「文葉(ふみよう)」さんと名乗られた。結社は「草樹」に入られていて、桂信子が亡くなったあととのこと、吉田成子さんについて俳句を学んでいるということだが、わたしは、ずっと前から存知上げている方のように、たのしくお喋りをしてしまった。
授賞式には、40人くらいの方が見えていた。その中には、存知上げている方々もいらっしゃってご挨拶をいただいたりしたのだった。
「桂信子賞」、再開はきっとあると思うが、ひとまず終わりというのが少し残念な思いでわたしは東京に戻ってきたのだった。
(ふらんす堂「
編集日記」2020/1/20より抜粋/Yamaoka Kimiko)